2018年の新興市場見通し:主な牽引役とリスク要因

2017 年 12 月 10 日

新興市場株式は年初来、大幅に上昇しており、先月も例外ではありませんでした。先進国のマクロ経済のデータは明るい材料であり、11月に新興市場株式は3.5%上昇しました。一方、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での25ベーシスポイントの利上げが広く見込まれるなか、新興市場国通貨と株式の上昇モメンタムはわずかに低下しています。

2018年を迎えるにあたり、当社は新興市場が今後も世界的な同時景気回復の恩恵を享受すると考えています。シュローダー社によると、2018年には世界経済の成長率は3.3%を持続すると見込まれ、今後も世界貿易を促進し、ひいては新興市場株式の追い風になります。この結果、2018年に新興市場における企業の収益は改善するでしょう。また、世界経済の同時成長は米国と主要新興国における経済状況と金融政策の乖離が縮小していることを意味します。これは米連邦準備制度理事会(FRB)が金利の正常化を目指しているにもかかわらず、米ドルが年初来、大幅に下落していることの理由を説明するものです。当社は2018年も米ドルはやや低調に推移するとみており、新興市場株式にとって好材料となるでしょう。



楽観的な成長見通しに加え、新興市場株式のバリュエーションは相対ベースでおおむね魅力的です。MSCI新興国株価指数の予想株価収益率(PER)は12.8倍と、MSCI世界株価指数との比較では、24%のディスカウントです。2013~2015年の大規模な資金流出を踏まえ、投資家のポジショニングが比較的小規模であることを考慮に入れれば、中国・香港など一部新興市場の株式市場は引き続き活況を呈すると考えられます。



一方、最近の上昇傾向に歯止めをかけるおそれのある大きなリスク要因として、中国における金融状態の急激な引き締めが挙げられます。第19回共産党全国代表大会で世界第二の経済大国である中国のレバレッジ解消と金融安定化の重要性が強調されたことで、11月初めに国債利回りは急上昇しました。この結果、レバレッジ解消と流動性の低下が景気の大幅な鈍化やデフォルトにつながるのではないかという懸念が高まりつつあります。実際、マネーサプライ(M2)や融資総額、購買担当者景況指数(PMI)といった最近のマクロ経済データからは、マクロ経済が鈍化している兆候が窺えます。今後も金融緩和の後退による景気の減速の予兆を注視していきます。